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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第16章 第七話 【雪花】 其の壱

お彩の母お絹は質の悪い流行風邪で亡くなり、因果なことに、その父―つまりお彩にとっては祖父に当たる参次もまた同じ病を得て亡くなっている。伊八がこの時期になると流行る風邪を警戒するのも無理からぬことであった。しかも二人共が夜泣き蕎麦屋の屋台を楽々と引くほどの力自慢であり、普段から健康だけが取り柄と豪語するほどであった。それが寝付いて数日ほどで呆気なく逝ってしまったのだ。
「私は大丈夫よ。おとっつぁんの方こそ、もう若くないんだから、気を付けてね」
お彩が笑いながら言うと、伊八は眉をしかめた。
「何でえ。いきなり人を年寄り扱いしやがって」
伊八は年甲斐もなく、頬を膨らませた。そんな時に無邪気とも思えるほどの仕草がまた伊八という男の人間的魅力になっていることにも、伊八は気づいていない。
「私は大丈夫よ。おとっつぁんの方こそ、もう若くないんだから、気を付けてね」
お彩が笑いながら言うと、伊八は眉をしかめた。
「何でえ。いきなり人を年寄り扱いしやがって」
伊八は年甲斐もなく、頬を膨らませた。そんな時に無邪気とも思えるほどの仕草がまた伊八という男の人間的魅力になっていることにも、伊八は気づいていない。

