この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第16章 第七話 【雪花】 其の壱

実際に、お彩が父をこうまで客観的に―一人の人間として眺めることができるようになったのは、つい最近のことだ。それまでのお彩にとって伊八は無条件に大好きな父親であり、母が突如として亡くなってからは、むしろ「男」としての父を意識し、そのことで苦しむことになった。
そして、その父が実の父ではないと知り、今のような心境に、つまり本当に一人の人間、父親としての伊八を見ることができるようになるまでには随分と刻を要したのだ。実の娘でないと知りながら、再婚もせずにずっと見守り続けてくれる父の愛情は穏やかな川の流れのようなもので、お彩にとっては必要不可欠なものである。
「あ、折角持ってきたのに、忘れちゃ大変」
お彩は思い出して、小脇に抱えていた包みを父の方に押しやった。
そして、その父が実の父ではないと知り、今のような心境に、つまり本当に一人の人間、父親としての伊八を見ることができるようになるまでには随分と刻を要したのだ。実の娘でないと知りながら、再婚もせずにずっと見守り続けてくれる父の愛情は穏やかな川の流れのようなもので、お彩にとっては必要不可欠なものである。
「あ、折角持ってきたのに、忘れちゃ大変」
お彩は思い出して、小脇に抱えていた包みを父の方に押しやった。

