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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第16章 第七話 【雪花】 其の壱

娘の態度は、あまりにも不自然だった。それが余計に伊八には己れの勘が当たっていることを告げていた。
「お彩、一体、そいつはどこのどいつなんだ?」
伊八が問うても、お彩は頑なにうつむくばかりだ。伊八は溜め息を吐いた。
「な、父ちゃんはしがねえただの職人だけども、これでも、ちっとばかりはつてもある。お武家にも商家にも知り合いはいるから、もしかしたら、お前の力になってやれることもあるかもしれねえぞ。悪いようにはしねえから、父ちゃんにだけは教えてくれ。お前の惚れた男はどこのどいつなんだ?」
父の言葉は真実である。名人と呼ばれる父の顧客には高禄の直参旗本の奥方さまや大店と呼ばれる店の内儀がいるのだ。もし、仮に想う相手が身分違いの男だったとしても、そこから口利きをして貰うといった手があると、父はお彩に伝えたいのだろう。
「お彩、一体、そいつはどこのどいつなんだ?」
伊八が問うても、お彩は頑なにうつむくばかりだ。伊八は溜め息を吐いた。
「な、父ちゃんはしがねえただの職人だけども、これでも、ちっとばかりはつてもある。お武家にも商家にも知り合いはいるから、もしかしたら、お前の力になってやれることもあるかもしれねえぞ。悪いようにはしねえから、父ちゃんにだけは教えてくれ。お前の惚れた男はどこのどいつなんだ?」
父の言葉は真実である。名人と呼ばれる父の顧客には高禄の直参旗本の奥方さまや大店と呼ばれる店の内儀がいるのだ。もし、仮に想う相手が身分違いの男だったとしても、そこから口利きをして貰うといった手があると、父はお彩に伝えたいのだろう。

