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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第17章 第七話 【雪花】 其の弐

こんな目に遭っても、お彩は陽太―京屋市兵衛に惚れている。哀しいことに、あの男の正体を知っても、お彩の中に棲みついた男の面影は消えなかった。他の男を恋い慕いながら、また別の男と所帯を持つなぞ、以前のお彩なら考えもできないことだったが、この頃ではそれもまた致し方のないことだろうと考えるようになった。それは何も道理をわきまえた大人になったわけではなく、お彩の中に諦めにも似た虚無感が生まれたせいだろう。
一番目に惚れた男とは添い遂げられなくても、二番目に好きになった男とは―いや、好きにはなれなくとも、相手の男が良い人間であれば穏やかな家庭を築けるのではないか。その中に互いを労り合う気持ちの底に愛情らしいものが芽生えるかもしれないし、恋情はなくとも良き夫婦にはなれるだろう。
一番目に惚れた男とは添い遂げられなくても、二番目に好きになった男とは―いや、好きにはなれなくとも、相手の男が良い人間であれば穏やかな家庭を築けるのではないか。その中に互いを労り合う気持ちの底に愛情らしいものが芽生えるかもしれないし、恋情はなくとも良き夫婦にはなれるだろう。

