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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第17章 第七話 【雪花】 其の弐

相手の男には申し訳ないけれど、そんな夫婦のあり方もあっても良いのではないかと思う。そんな時、お彩の脳裡をよぎるのは、左官の伊勢次であった。伊勢次は最近、「花がすみ」にも顔を見せなくなった。四月に随明寺の境内で陽太と殴り合いの喧嘩をした後、お彩は伊勢次と話すどころか顔すら合わせていない。どうやら、伊勢次の方でお彩を避けている風であった。
それもまた致し方ないと、お彩は思う。伊勢次は心底からお彩の身を案じて陽太とは別れた方が良いと言っているのだ。不幸にも、伊勢次の推量は今のところ的中している。陽太は実は大店にして老舗京屋の主人であり、そのことをお彩に三年もの間、隠し続けていたのだ。
そして、陽太はもう八ヶ月間、お彩の前に姿を見せてはいない。お彩は良いように遊ばれているのだという伊勢次の持論は現実として間違ってはいない。
それもまた致し方ないと、お彩は思う。伊勢次は心底からお彩の身を案じて陽太とは別れた方が良いと言っているのだ。不幸にも、伊勢次の推量は今のところ的中している。陽太は実は大店にして老舗京屋の主人であり、そのことをお彩に三年もの間、隠し続けていたのだ。
そして、陽太はもう八ヶ月間、お彩の前に姿を見せてはいない。お彩は良いように遊ばれているのだという伊勢次の持論は現実として間違ってはいない。

