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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第18章 第七話 【雪花】 其の参

「このままで良いから」
そう言って、まるで魅入れたかのように降りしきる雪を眺め続けた。まるで幼い少女のようにあどけない表情は、先刻まで陽太の腕の中で乱れた艶やかな女とは別人のようであった。
「お前さんは、本当にこれで良かったのか?」
問われ、お彩は視線を外に向けたままで訊き返す。相手の質問に質問で返すのは卑怯だとは判っていたけれど、問わずにはおれなかった。
「京屋の旦那の方こそ、お内儀(かみ)さんに申し訳ないことをしちまったのではないですか」
それまでずっと「陽太」としか呼ばなかった女が初めて京屋―現在の名を呼んだ。そのことに、陽太は気づいているのかいないのか。
そう言って、まるで魅入れたかのように降りしきる雪を眺め続けた。まるで幼い少女のようにあどけない表情は、先刻まで陽太の腕の中で乱れた艶やかな女とは別人のようであった。
「お前さんは、本当にこれで良かったのか?」
問われ、お彩は視線を外に向けたままで訊き返す。相手の質問に質問で返すのは卑怯だとは判っていたけれど、問わずにはおれなかった。
「京屋の旦那の方こそ、お内儀(かみ)さんに申し訳ないことをしちまったのではないですか」
それまでずっと「陽太」としか呼ばなかった女が初めて京屋―現在の名を呼んだ。そのことに、陽太は気づいているのかいないのか。

