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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第19章 第八話 【椿の宿】

別れた際に市兵衛が耳許で囁いた台詞は、お彩の心を針のように突いた。
―次は十日後にここで逢おう。
その日を迎えるまで、市兵衛はお彩に本名さえ教えず、身分を隠してきた。いくらお彩が逢いたいと思っても、逢いにくるのは市兵衛の意思一つであり、それも一年に二、三度だった。そんな市兵衛の仕打ちを幾度恨めしく思い、男の心を疑ったやもしれない。
それなのに、やっと身体を重ねたとたんに、次は十日後にと男の方から言い出してきたのだ。その時、お彩は市兵衛の言葉に軽い衝撃を受けた。同時に、市兵衛が求めているのが自分ではなく、その身体の方ではないかと勘繰ってしまった。
今日も数日ぶりに逢った市兵衛は性急にお彩を求めてきた。逢うなり烈しい口づけを交わし、お彩を紅絹の夜具に押し倒した―。
―次は十日後にここで逢おう。
その日を迎えるまで、市兵衛はお彩に本名さえ教えず、身分を隠してきた。いくらお彩が逢いたいと思っても、逢いにくるのは市兵衛の意思一つであり、それも一年に二、三度だった。そんな市兵衛の仕打ちを幾度恨めしく思い、男の心を疑ったやもしれない。
それなのに、やっと身体を重ねたとたんに、次は十日後にと男の方から言い出してきたのだ。その時、お彩は市兵衛の言葉に軽い衝撃を受けた。同時に、市兵衛が求めているのが自分ではなく、その身体の方ではないかと勘繰ってしまった。
今日も数日ぶりに逢った市兵衛は性急にお彩を求めてきた。逢うなり烈しい口づけを交わし、お彩を紅絹の夜具に押し倒した―。

