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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第19章 第八話 【椿の宿】

それでも、母の死後、自分をこの世に送り出してくれたはずの父伊八に「男」を感じるようになり、自分が実の父親に惚れているのだと思い込んでしまった。自分は獣のような、破廉恥な娘なのだと烈しい懊悩に取り憑かれている最中、市兵衛が現れた。
市兵衛を愛するようになった時、お彩は我が身の中の父への思慕がけして愛や恋―愛欲めいたものではないことを確かめ得たのだ。その意味で、市兵衛は、お彩を真実の愛にめざめさせた男でもあった。
だからこそ、お彩は、初めて市兵衛を見た時、市兵衛の抱える孤独の原因が自分の内に巣喰うものと同一のものからくるのではないかと思った。そして、男の中にほの見える深い絶望の翳りゆえに、いっそう市兵衛に惹かれていくことになった。
市兵衛を愛するようになった時、お彩は我が身の中の父への思慕がけして愛や恋―愛欲めいたものではないことを確かめ得たのだ。その意味で、市兵衛は、お彩を真実の愛にめざめさせた男でもあった。
だからこそ、お彩は、初めて市兵衛を見た時、市兵衛の抱える孤独の原因が自分の内に巣喰うものと同一のものからくるのではないかと思った。そして、男の中にほの見える深い絶望の翳りゆえに、いっそう市兵衛に惹かれていくことになった。

