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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第20章 第八話 【椿の宿】 其の弐

「花がすみ」には夕刻から出ることになっている。お彩は、つとめて市兵衛の方を見ないようにして言った。
立ち上がると、その場に散らばっていた肌襦袢や着物を拾い、手早く身につけてゆく。
「まだ早いだろう、もう少しくらいは良いんじゃねえか」
市兵衛の声が追いかけてきたが、お彩はそのまま着物を着て帯を締めた。苛立たしさの混じった吐息が聞こえてきたが、聞こえぬ風を装う。
「次は五日後にここで逢おう、良いな」
念を押すように言われても、はっきりとした返事を返さなかった。
「お彩―」
立ち上がった市兵衛の手が抱きしめようと再び伸びてこようとしたが、お彩はその手を逃れるように部屋の襖を開けた。
立ち上がると、その場に散らばっていた肌襦袢や着物を拾い、手早く身につけてゆく。
「まだ早いだろう、もう少しくらいは良いんじゃねえか」
市兵衛の声が追いかけてきたが、お彩はそのまま着物を着て帯を締めた。苛立たしさの混じった吐息が聞こえてきたが、聞こえぬ風を装う。
「次は五日後にここで逢おう、良いな」
念を押すように言われても、はっきりとした返事を返さなかった。
「お彩―」
立ち上がった市兵衛の手が抱きしめようと再び伸びてこようとしたが、お彩はその手を逃れるように部屋の襖を開けた。

