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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第3章 第一話-其の参-

徳全が改めてお彩を見た。
「ところで、今日はそなたに逢いたいという御仁がお見えでな」
思いがけぬ言葉に、眼を見開く。
「そなたがいつも母者の月命日には必ずここに来るということを伝えておったのじゃよ」
来なさいと言われ、お彩は素直に徳全の言葉に従った。徳全は常に市井の人々と共に生きる僧だ。飢饉の年には老体にむち打って自ら炊きだしに当たり、道端に行き倒れた骸に経を唱えるという人なのだ。それゆえ、多くの信者に慕われている。信頼するに十分当たる人だとよく心得ていた。
徳全に案内されたのは、随明寺の庫裡の奥まった一角であった。磨き抜かれた廊下を幾度も折れ曲がり辿り着いた小座敷で、お彩は四半刻ほど待たされた。襖には雪を戴いた竹林と、その間で戯れ飛ぶつがいの雀が墨絵で描かれている。その絵をぼんやりと眺めていた時、突如として襖が向こうから開いた。
「ところで、今日はそなたに逢いたいという御仁がお見えでな」
思いがけぬ言葉に、眼を見開く。
「そなたがいつも母者の月命日には必ずここに来るということを伝えておったのじゃよ」
来なさいと言われ、お彩は素直に徳全の言葉に従った。徳全は常に市井の人々と共に生きる僧だ。飢饉の年には老体にむち打って自ら炊きだしに当たり、道端に行き倒れた骸に経を唱えるという人なのだ。それゆえ、多くの信者に慕われている。信頼するに十分当たる人だとよく心得ていた。
徳全に案内されたのは、随明寺の庫裡の奥まった一角であった。磨き抜かれた廊下を幾度も折れ曲がり辿り着いた小座敷で、お彩は四半刻ほど待たされた。襖には雪を戴いた竹林と、その間で戯れ飛ぶつがいの雀が墨絵で描かれている。その絵をぼんやりと眺めていた時、突如として襖が向こうから開いた。

