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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第3章 第一話-其の参-

と、突然、背後から声をかけられた。
「もし、お彩さん」
低い嗄れた声に振り返れば、そこには背の低い老いた僧がひそやかに立っていた。
「徳全様」
お彩は慌てて頭を下げた。
徳全は随明寺の住持である。由緒ある大寺の住職という立場であるにも拘わらず、豪放磊落というのか、気取らぬ人柄で誰にでも気軽に声をかける。
「いつもお世話になっています」
お彩が丁寧に挨拶すると、徳全は顔の前で手をひらひらと振った。
「止しなさい、そのような勿体ぶった挨拶を儂はどうも好まん。ところで、今日は母者の墓参りかの」
「はい」
お彩が頷くと、徳全は遠い眼になった。
「儂のような老体が図らずも長生きして、母者のような若い者がさっさと逝くとは、人の世の寿命は御仏が定めたもうものとはいえ、はてさて思うに任せぬものよ」
「もし、お彩さん」
低い嗄れた声に振り返れば、そこには背の低い老いた僧がひそやかに立っていた。
「徳全様」
お彩は慌てて頭を下げた。
徳全は随明寺の住持である。由緒ある大寺の住職という立場であるにも拘わらず、豪放磊落というのか、気取らぬ人柄で誰にでも気軽に声をかける。
「いつもお世話になっています」
お彩が丁寧に挨拶すると、徳全は顔の前で手をひらひらと振った。
「止しなさい、そのような勿体ぶった挨拶を儂はどうも好まん。ところで、今日は母者の墓参りかの」
「はい」
お彩が頷くと、徳全は遠い眼になった。
「儂のような老体が図らずも長生きして、母者のような若い者がさっさと逝くとは、人の世の寿命は御仏が定めたもうものとはいえ、はてさて思うに任せぬものよ」

