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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第20章 第八話 【椿の宿】 其の弐

喜六郎はお彩当人からも伊勢次と所帯を持つ気はないと聞いているし、伊勢次が店に来なくなったのも、二人の仲にそれなりの決着がついたからだろうと見当をつけていた。
だからこそ、伊勢次がこの店の敷居をまたぐのにどれほどの勇気と忍耐を要したかが察せられる。そんな伊勢次に対しては、何事もなかったかのような態度でいるのが、せめてもの思いやりというものだろう。
お彩は戸惑いつつ、喜六郎の方を見た。
喜六郎が板場からひょいと顔を出して眼顔で頷いた。将棋の駒を連想させる四角張った顔には〝行ってこい〟と書いてある。お彩は躊躇いを見せながらも、伊勢次の後についていった。
だからこそ、伊勢次がこの店の敷居をまたぐのにどれほどの勇気と忍耐を要したかが察せられる。そんな伊勢次に対しては、何事もなかったかのような態度でいるのが、せめてもの思いやりというものだろう。
お彩は戸惑いつつ、喜六郎の方を見た。
喜六郎が板場からひょいと顔を出して眼顔で頷いた。将棋の駒を連想させる四角張った顔には〝行ってこい〟と書いてある。お彩は躊躇いを見せながらも、伊勢次の後についていった。

