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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第20章 第八話 【椿の宿】 其の弐

お彩は伊勢次から少し離れて歩いた。伊勢次は「花がすみ」を出ると金物屋と筆屋が向かい合って建つ四ツ辻を左に曲がって大通りに出た。その大通りからそれた路地の端に、「花がすみ」はあった。
人の多い通りを伊勢次はゆっくりとした足どりで歩いてゆく。賑やかな往来を抜けると、その先は一変して閑静な武家屋敷町になった。「和泉橋町」と呼ばれる一帯で、老中松平越中守さまのお屋敷を初め、直参旗本、御家人など様々な武士の屋敷が建ち並んでいる。
松平越中守さまの広壮なお屋敷の脇を過ぎると、その先に小さな橋が見えた。この和泉橋を渡った向こう側が「町人町(ちょうにんまち)」、その名のとおり、あまたの商家が軒を連ねてひしめく商人の町である。京屋もこの町人町にあり、仲でも錚々(そうそう)たる大店ばかりが並ぶ目抜き通りに位置していた。
人の多い通りを伊勢次はゆっくりとした足どりで歩いてゆく。賑やかな往来を抜けると、その先は一変して閑静な武家屋敷町になった。「和泉橋町」と呼ばれる一帯で、老中松平越中守さまのお屋敷を初め、直参旗本、御家人など様々な武士の屋敷が建ち並んでいる。
松平越中守さまの広壮なお屋敷の脇を過ぎると、その先に小さな橋が見えた。この和泉橋を渡った向こう側が「町人町(ちょうにんまち)」、その名のとおり、あまたの商家が軒を連ねてひしめく商人の町である。京屋もこの町人町にあり、仲でも錚々(そうそう)たる大店ばかりが並ぶ目抜き通りに位置していた。

