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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第20章 第八話 【椿の宿】 其の弐

伊勢次は、そんなお彩を見て笑った。
「良いんだ、お彩ちゃんがそんな眼で俺を見るのも無理はねえところもあるんだから。何しろ、俺はお前の前でお彩ちゃんの惚れた男を殴っちまったからな」
伊勢次はまだ市兵衛の素性を知らない。そのことは、市兵衛を毛嫌いしている伊勢次に敢えて、この場で告げることはなかった。真実はいずれ、明らかになるだろう。思いもかけない偶然から、お彩が陽太(京屋市兵衛)の正体を知ったように。
お彩が口を開こうとするのに、伊勢次は真顔で首を振った。
「良いんだよ、お彩ちゃん。お前がどこの誰を好いたとしても、俺は所詮口出しをできる立場じゃねえ」
「良いんだ、お彩ちゃんがそんな眼で俺を見るのも無理はねえところもあるんだから。何しろ、俺はお前の前でお彩ちゃんの惚れた男を殴っちまったからな」
伊勢次はまだ市兵衛の素性を知らない。そのことは、市兵衛を毛嫌いしている伊勢次に敢えて、この場で告げることはなかった。真実はいずれ、明らかになるだろう。思いもかけない偶然から、お彩が陽太(京屋市兵衛)の正体を知ったように。
お彩が口を開こうとするのに、伊勢次は真顔で首を振った。
「良いんだよ、お彩ちゃん。お前がどこの誰を好いたとしても、俺は所詮口出しをできる立場じゃねえ」

