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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第22章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】 其の壱

お彩は、それからの話で小文と父との拘わりを知った。伊八が来年の正月用の晴れ着にとを「ゆめや」を訪ね、着物を買ったこと。その数日後に再び「ゆめや」を訪れ、自分の作った簪を小文に贈ったこと。桔梗の簪を渡したその日、小文に呼び止められて、小文の作った握り飯を食べたこと。その帰り道、伊八は子どもを庇い荷車に轢かれるという事故に巻き込まれたのだった―。
「こんなことを今更申し上げて、お嬢さんは気を悪くなさるだけでしょうけど」
小文は前置きしてから、こう語った。
「伊八さんは、亡くなった亭主によく似てたんです。顔形もだけど、滅法人が好くて、優しいところが。私はまた惚れたお人に置いていかれちまいましたよ。もっとも、この想いは私だけのもので、伊八さんは何もご存じないことです。
「こんなことを今更申し上げて、お嬢さんは気を悪くなさるだけでしょうけど」
小文は前置きしてから、こう語った。
「伊八さんは、亡くなった亭主によく似てたんです。顔形もだけど、滅法人が好くて、優しいところが。私はまた惚れたお人に置いていかれちまいましたよ。もっとも、この想いは私だけのもので、伊八さんは何もご存じないことです。

