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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第22章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】 其の壱

でも、こんなことになるのなら、思い切って気持ちを打ち明けておけば良かった。たったの一度で惚れちまいましたって」
しかし、お彩は、小文のこの打ち明け話に愕きはしたものの、むしろホッとした。
母お絹が突如としてみまかってからのこの五年間、父はずっと独り身を通してきた。
―俺はお絹以外の女は要らねえ。
それが父の口癖でもあった。そんな母ひと筋であった父が四十二年というけして長くはない人生の最後になって、小文という女性と出逢い、たったひとときでも、男としてそのような心ときめくような想いをしていたというのなら―、娘としてこれほど嬉しいことはなかった。
しかし、お彩は、小文のこの打ち明け話に愕きはしたものの、むしろホッとした。
母お絹が突如としてみまかってからのこの五年間、父はずっと独り身を通してきた。
―俺はお絹以外の女は要らねえ。
それが父の口癖でもあった。そんな母ひと筋であった父が四十二年というけして長くはない人生の最後になって、小文という女性と出逢い、たったひとときでも、男としてそのような心ときめくような想いをしていたというのなら―、娘としてこれほど嬉しいことはなかった。

