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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第22章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】 其の壱

「最後の最後になって、あなたのような方とめぐり逢えて、きっと父は幸せだったのだと思います。本当にありがとうございました」
そう言えば、と、お彩は思い出した。
随明寺の墓地に伊八の亡骸を葬った時、墓地の片隅に桔梗の花が揺れていた。通常、桔梗は初秋に花開くものと相場が決まっているのに、霜月も半ばを過ぎようとしているこの時期には不似合いともいえた。冷たい秋雨に打たれながらも、たった一輪の白い花は凛として咲いていた。
珍しいこともあるものだと思ったけれど、考えてみれば、桔梗は母の好きな花でもある。父の死は哀しいが、父はあれほど惚れた恋女房の待つ黄泉路へと旅立ったのだ。もう何ものもあの二人を分かつことはできない。そう考えることで、お彩はいくばくかでも自分の心を慰めた。
そう言えば、と、お彩は思い出した。
随明寺の墓地に伊八の亡骸を葬った時、墓地の片隅に桔梗の花が揺れていた。通常、桔梗は初秋に花開くものと相場が決まっているのに、霜月も半ばを過ぎようとしているこの時期には不似合いともいえた。冷たい秋雨に打たれながらも、たった一輪の白い花は凛として咲いていた。
珍しいこともあるものだと思ったけれど、考えてみれば、桔梗は母の好きな花でもある。父の死は哀しいが、父はあれほど惚れた恋女房の待つ黄泉路へと旅立ったのだ。もう何ものもあの二人を分かつことはできない。そう考えることで、お彩はいくばくかでも自分の心を慰めた。

