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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第22章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】 其の壱

恐らくこの季節外れに咲いた白い花は、母から父への手向けの花―、お彩はそのように思えてならなかった。
お彩の脳裡に幼き日の記憶が蘇る。
父の膝の上に座って甘えたこと、母が夜泣き蕎麦屋をしていたので、夜には父が添い寝をしながら寝かしつけてくれた。子どもの頃の父の優しい姿、想い出が次々に廻り灯籠のように蘇っては消えてゆく。
生まれた日から、いや、母の胎内にいるときから、変わらぬ愛情でずっと生さぬ仲のお彩を包み込んでくれた。雨に濡れていた桔梗の花と小文の持つ簪の花が自然に重なった。
その可憐な花が涙の雫に滲んだ。
お彩は流れ落ちる涙を拭おうともせず、「ゆめや」の女主人に頭を深々と下げた。
お彩の脳裡に幼き日の記憶が蘇る。
父の膝の上に座って甘えたこと、母が夜泣き蕎麦屋をしていたので、夜には父が添い寝をしながら寝かしつけてくれた。子どもの頃の父の優しい姿、想い出が次々に廻り灯籠のように蘇っては消えてゆく。
生まれた日から、いや、母の胎内にいるときから、変わらぬ愛情でずっと生さぬ仲のお彩を包み込んでくれた。雨に濡れていた桔梗の花と小文の持つ簪の花が自然に重なった。
その可憐な花が涙の雫に滲んだ。
お彩は流れ落ちる涙を拭おうともせず、「ゆめや」の女主人に頭を深々と下げた。

