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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第22章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】 其の壱

小文が帰った後、お彩は一人で父の遺した物たちを見ていた。父が生命の次に大切にしていた仕事道具や父の着ていたものでも眺めているだけでも、少しは淋しさや哀しさを慰められるかと思ったのである。だが、小さな箪笥の引き出しを開けた時、お彩はそこに思いもかけぬものを見付けた。
「おとっつぁん―」
そのときこそ、お彩は声を上げて泣いた。
父が遺してくれた晴れ着を胸に抱いて泣きじゃくった。ひろげてみると、それは薄桃色の地の、裾に梅とつがいの鳥が描かれた上品な愛らしさのある着物であった。これが小文の言っていた父がお彩のためにと買い求めた晴れ着に相違なかった。
―その男に心から惚れているなら、想いを貫け。
「おとっつぁん―」
そのときこそ、お彩は声を上げて泣いた。
父が遺してくれた晴れ着を胸に抱いて泣きじゃくった。ひろげてみると、それは薄桃色の地の、裾に梅とつがいの鳥が描かれた上品な愛らしさのある着物であった。これが小文の言っていた父がお彩のためにと買い求めた晴れ着に相違なかった。
―その男に心から惚れているなら、想いを貫け。

