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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第22章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】 其の壱

伊勢次の母は今、殆ど寝たきりの状態だという。何でも肺を病んでいるとかで、伊勢次はこの病身の母を大切にしていた。お彩は当惑した。この時刻なら伊勢次が家にいるかと思って来たのだが、どうやら当てが外れたようだ。
お彩が返答に窮していると、背後から聞き慣れた声がかかった。
「こいつは珍しいな。お彩ちゃんの方からわざわざ来てくれるなんざァ、赤い雪でも降るかもな」
わざと明るく冗談めかしているのは、かえってお彩の沈みがちな心を引き立てようとしているのだと判る。
顔を洗ったばかりなのか、陽に灼けた膚にかすかに水滴が残っていた。
お彩が返答に窮していると、背後から聞き慣れた声がかかった。
「こいつは珍しいな。お彩ちゃんの方からわざわざ来てくれるなんざァ、赤い雪でも降るかもな」
わざと明るく冗談めかしているのは、かえってお彩の沈みがちな心を引き立てようとしているのだと判る。
顔を洗ったばかりなのか、陽に灼けた膚にかすかに水滴が残っていた。

