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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第23章 第十話 【宵の花】 其の壱

五代目は陽太がまだ丁稚の時分から眼をかけ、商用に行くときも必ず連れていった。店の他の奉公人たちにも、いずれ陽太がお市の婿になることは話し上で、陽太を自ら一人前の商人に育てるべく躾た。ゆえに立場こそあくまで奉公人ではあったが、陽太は当時から既に未来の若旦那として周囲から認められていたのだ。
陽太は丁稚から手代、手代頭と順当に出世した。陽太が二十歳の時、五代目市兵衛が卒中の発作で倒れた。その時、陽太は長女のお市と所帯を持って、わずか半年であった。市兵衛は辛うじて生命を取り留めたものの、殆ど寝たきりになってしまった。意識は確かであっても、現実として市兵衛が商売に復帰する目途はなかった。五代続いた京屋もこれで終わりかと奉公人初め危ぶむ者も多かった。
陽太は丁稚から手代、手代頭と順当に出世した。陽太が二十歳の時、五代目市兵衛が卒中の発作で倒れた。その時、陽太は長女のお市と所帯を持って、わずか半年であった。市兵衛は辛うじて生命を取り留めたものの、殆ど寝たきりになってしまった。意識は確かであっても、現実として市兵衛が商売に復帰する目途はなかった。五代続いた京屋もこれで終わりかと奉公人初め危ぶむ者も多かった。

