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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第4章 第二話【花影】-其の壱-

父が誰か適当な相手を見つけて再婚でもすれば良いのにと願う半面、その逞しい腕に別の女を抱いている場面を想像しただけで気が狂いそうになった。そんな自分の醜さ、おぞましさを意識する度に自己嫌悪に陥る、そんなことの繰り返しが続いた。肝心の父がお彩の心中を知らぬことだけが唯一の救いであった。
そんなある日、お彩の前に一人の男が現れる。丁度甚平店を出て、「花がすみ」で働くようになってまもなくのことだ。その男はいつも思い出したように突然「花がすみ」に現れ、片隅の席で手酌酒を呑む。たまに惣菜を二、三頼むことはあったが、大抵は特に料理を注文するでもなく、突き出しの小鉢料理をつつきながら、ゆっくりと燗酒を呑むのが決まりであった。
そんなある日、お彩の前に一人の男が現れる。丁度甚平店を出て、「花がすみ」で働くようになってまもなくのことだ。その男はいつも思い出したように突然「花がすみ」に現れ、片隅の席で手酌酒を呑む。たまに惣菜を二、三頼むことはあったが、大抵は特に料理を注文するでもなく、突き出しの小鉢料理をつつきながら、ゆっくりと燗酒を呑むのが決まりであった。

