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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第4章 第二話【花影】-其の壱-

お彩は何故か、その男のことが忘れられなかった。最初に出逢ったその日から、男の面影が瞼に灼きついて離れなかった。男はいつもひと月に一度ほどの割合で「花がすみ」を訪れ、四半刻ほど居ただけで帰ってゆく。そのたまの訪れを心待ちにするようになった。
そして更に一年を経た頃、男がふっつりと姿を見せなくなった。お彩は男の名も素性も知らない。そもそも男と言葉を交わすのは注文を取るときと頼まれた品を男の座る卓へ運ぶときくらいのものなのだ。
だが、まともに口をきいたことすらない、どこの誰とも知らぬ男に、お彩は強く惹かれていた。男にはもう二度と逢えぬのかと半ば諦めにも似た気持ちを抱き始めるようになった頃、既にその年も霜月の終わりを迎えていた。
そして更に一年を経た頃、男がふっつりと姿を見せなくなった。お彩は男の名も素性も知らない。そもそも男と言葉を交わすのは注文を取るときと頼まれた品を男の座る卓へ運ぶときくらいのものなのだ。
だが、まともに口をきいたことすらない、どこの誰とも知らぬ男に、お彩は強く惹かれていた。男にはもう二度と逢えぬのかと半ば諦めにも似た気持ちを抱き始めるようになった頃、既にその年も霜月の終わりを迎えていた。

