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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第30章 第十二話 【花見月の別れ】 其の壱

主の喜六郎は四角い将棋の駒のような顔の、見かけはなかなか強面の小男だが、滅法人が好くて、お彩のことも実の娘のように可愛がってくれた。
それが、たった一人の男との出逢いがお彩の運命を変えた。「花がすみ」の客としてある日突然、お彩の前に現れたその謎の男に、お彩は強く惹かれた。男はただ「陽太」とだけ名乗り、自らの素性を明かそうとはしなかった。お彩は男の本当の名さえ知らず、たまに風のように気紛れに現れる男に次第に烈しい恋情を抱くようになっていった。
凍てついた月のように美しい男の眼に宿る底知れぬ孤独と絶望の翳を見て、何とかしてその翳を取り払うことはできないものかと考えた。
それが、たった一人の男との出逢いがお彩の運命を変えた。「花がすみ」の客としてある日突然、お彩の前に現れたその謎の男に、お彩は強く惹かれた。男はただ「陽太」とだけ名乗り、自らの素性を明かそうとはしなかった。お彩は男の本当の名さえ知らず、たまに風のように気紛れに現れる男に次第に烈しい恋情を抱くようになっていった。
凍てついた月のように美しい男の眼に宿る底知れぬ孤独と絶望の翳を見て、何とかしてその翳を取り払うことはできないものかと考えた。

