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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第30章 第十二話 【花見月の別れ】 其の壱
 何故、伊勢次が最後までおきわからの文をお彩に見せなかったのか。恐らく死を覚悟した時点で、伊勢次はお彩に余計な重荷を背負わせたくないと思ったに相違ない。自分の死だけでもお彩に相当の打撃を与えるであろうのに、その上、残してゆく病身の母のことまで託すことはできないと考えた上でのことだったのだろう。
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