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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第30章 第十二話 【花見月の別れ】 其の壱

伊勢次にとって、おきわは何より大切な母親であったはずだ。その母親を置き去りにしてゆくことになると承知していながら、伊勢次には死を選ぶ道しかなかった。それほどに、伊勢次は追い詰められていたのだ。その心根を思う時、お彩は居たたまれない想いに駆られた。何度も求婚を断られつつも、行き場のない身重のお彩を受け容れてくれた伊勢次。
その伊勢次の優しさと一途な恋心をお彩は無残に打ちのめし、結果として、そのことが伊勢次に死を選ばせることになった。
伊勢次の死後しばらくは、自分もその後を追おうと幾度思ったかしれない。だが、ここで死ぬことは容易い。死ねば、お彩は罪の意識から逃れることもできる。良心の呵責に苛まれることもない。
その伊勢次の優しさと一途な恋心をお彩は無残に打ちのめし、結果として、そのことが伊勢次に死を選ばせることになった。
伊勢次の死後しばらくは、自分もその後を追おうと幾度思ったかしれない。だが、ここで死ぬことは容易い。死ねば、お彩は罪の意識から逃れることもできる。良心の呵責に苛まれることもない。

