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ドアの向こう〜君に逢いたくて〜
第4章 カイさんの事
「いらっしゃいませ。」
希の声が聞こえる。
ゴトッ…
私の隣りの椅子が動く音がした。
「こんばんは!」
優しい声が隣りから聞こえ、その声の方を見ると、フフッと優しく微笑むカイさんがいた。
「こ…こ…こんばんは…。」
突然現れた至近距離のカイさんに、ドキドキが止まらない。
お店で何度か会った事はあっても、隣りに座った事はない。
いつも遠くの席から、チラチラと見ているだけだったので、こうやって話し掛けられるのも初めてだった。
カイさんのもとにビールがくると、私は勇気をだして、自分のグラスを彼のグラスに近づけた。
「お疲れ様です。」
ん!?
カイさんが一瞬、そんな表情をしてこちらを見る。
カイさんと瞳が合う。
すぐに恥ずかしくなり、瞳をそらした。
ドキドキ…。
「あぁ!ありがとう!お疲れ様。」
優しい笑顔を見せて、私のグラスにカイさんのグラスが触れた。
そのグラスをそのまま口元に持っていくと、カイさんは一気にグイッと飲み干す。
グラスの中のビールは、あっというまになくなった。
“美味しそうに、お酒飲むんだなぁ。”
いつものクールなイメージとは、また違うカイさんの一面。
私はカイさんの事を何も知らない。
まだきっと、いろんな一面があるんだろう。
少しでも、カイさんを知る良いチャンスなのに、私はなかなか話し掛けられずにいた。
カイさんの事、もっと知りたいのに…。