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ドアの向こう〜君に逢いたくて〜
第5章 カイさんの誕生日

そう思った時

ガチャッ…

お店のドアが開いた。


「はぁー、疲れた。どうにか間に合った…。」

フワフワな黒髪が乱れたカイさんが、私の隣りに座った。

「希ちゃん、ビール!」

カイさんが、おしぼりで手を拭きながら、ビールを注文する。

ビールがくると、私の方を見て

「お疲れ様。遅くなってごめん。」

と、乾杯してくれた。

「こちらこそ、来てくれてありがとうございます。」

「思ったより仕事が長引いて参った…。」

ビールをいつものように、グイッと飲み干し落ち着いたカイさんは、煙草を吸う。

フーッとカイさんの、口からため息と煙が流れる。

「今日は、早くから飲んでたの?」

「はい。結構早くからなんで、もう酔っ払いです。」

「俺も今日は疲れてたから、さっきのビールだけで結構きてる。」

そう言って、2杯目のビールをまたグイッと飲む。

カイさんを見ると、すでにいつもよりも瞳が細くなっていた。

「お互いに顔、赤いね。ほらっ!」

カイさんが、希にもらった新しいおしぼりを私の頬につけた。

「気持ちいい?」

カイさんがイタズラっぽく笑う。

「気持ちいいですけど、カイさんも赤いですよ。」

そう言って、おしぼりをカイさんの頬に押し付けた。

「ホンマや。気持ちいい。」

カイさんが軽く瞳を閉じる。

おしぼりを持つ私の手ごと、カイさんがおしぼりを自分の頬に更に強く押し付ける。

重なるカイさんと私の手。

酔っているせいか、カイさんの手は、とても温かかった。


“このまま時が止まればいいのに…。”
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