この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ドアの向こう〜君に逢いたくて〜
第13章 誕プレデート☆横浜
中華街を堪能した私達は、また山下公園を歩いて桜木町方面へ向かう。
陽が落ち始めた山下公園は、先程とは違う雰囲気を漂わせていた。
だいぶ暗くなった山下公園を歩いていると
「あそこのベンチ空いてるから、ちょっと座ろうか。」
と海音がベンチに座る。
私も海音の横に座ると、海音が私の頭を自分の肩に乗せた。
「あのね、渚。話しておきたい事があるんだ。」
海音が急に真剣な表情をして言った。
「んっ?どうしたの?」
「前も話したんだけど、俺こっちに来てもう5年なんや。もしかしたら、次の異動で転勤になるかもしれない…。」
さっき頭を過った転勤の事。
考えないふりをしていたけれど、海音の口から聞かされると、それは更に現実味を帯びてしまって、私はどうしたらいいのか、わからなくなってしまった。
「まだ決まったわけじゃないけど、確率は高いから話しておかないとって思ってたんだ。」
「………。」
「秋までは辞令でないから、まだ平気やから。デート中にこんな話してごめんね。」
海音が私の頭を撫でる。
「今日はせっかくデート中なんやし、楽しもう!心の片隅に今の事は入れておいてくれればいいから。」
「わかった…。話してくれてありがとう。急に言われたら、多分もっとショックだったと思うから。」
海音が私の頬を撫でたかと思ったら
「瞳閉じて…。」
そう言った。
静かに瞳を閉じると、海音の唇が私のまぶたに優しく触れた。
「渚が泣かないように、元気になるおまじない!」
瞳を開けると海音が優しく私を見つめていた。
「海音、ありがと…。」
思えば酔ってない普段の海音と、こんなに長い時間いるのは初めてだった。
基本酔っている時の海音も激しさは増すものの、優しい所は変わらない。
どちらにしても、優しい海音。
これが彼の本来の性格なんだろう。