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Memory of Night 番外編
第2章 Episode of YOI

 愛美が緊張に体を強ばらせる。
 静まり返った校内で、再び響き始める足音。
 それを認識する暇もなく、開け放したままのドアの前には彼が立っていた。

「桐原……?」

 驚きに見開かれた彼の灰色の瞳には、確かに愛美が映っていた。

「た、大河くん……」

 自分でもよくわかるくらいに声が震えている。
 彼の名前を呼んだのなんて初めてだ。愛美は頭のどこか隅のほうでそう思った。
 宵はつかの間愛美の顔を凝視していたが、やがて足元に転がる筆箱に目を向けた。
 手にとって、膝を抱えて座っている愛美の前まで歩み寄る。愛美の体勢に合わせるように体をかがめて、愛美にそれを差し出す。

「あ……」

 ありがとうと言おうとしたのに、言葉が続かなかった。
 彼の瞳から目が離せない。
 視線を外せないまま、恐る恐る指を伸ばして筆箱を受け取る。

「わたし……忘れ物を取りに来たの。理科の教科書とか筆箱とか……。そしたらたまたま声が聞こえて、それで……っ」

 焦る頭で、愛美は必死に言い訳を探した。
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