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Memory of Night 番外編
第2章 Episode of YOI
さきほどの子は三万円渡していたけれど、愛美の手持ちの金はそんなになかった。
それでもあるだけ払わなければと、鞄をあさって財布を取り出そうとする愛美の手を、宵は掴んだ。
手が触れてびくっと身を震わせる愛美に構わず、そのまま鞄に押し戻そうとする。
「いーよ、どうせなんもしてねーんだから。つか脅すつもりだったんじゃねーのかよ。金払ってどーする」
「あ……」
「あ……って」
呆れたように言われ、宵は教科書や筆記道具などを乱暴に鞄に押し込もうとする。
「わ、無理矢理入れたら教科書折れちゃう……っ」
「知るか!」
愛美の抗議は軽く一蹴。
綺麗な顔立ちをしているくせに、言葉遣いや仕草はやたらと荒っぽかった。
こうして間近で話してみると、それがとてもよくわかる。
愛美は意外に思いながらも、いちいち感激している場合ではなかった。
彼の言う通り、時間がもうないのだ。
愛美は鞄を肩に掛けて長机の上から降りた。
陽が沈んでしまったせいでだいぶ暗くなった教室の中を、宵に続いてドアへと向かう。