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その恋を残して
第1章 好きにならないで!
※ ※
「なんなんだ、あの女!」
これは、家に自室に入った瞬間、堰を切ったように口から出た言葉。
「可愛いからって、自意識過剰なんじゃねーの?」
苛立ちのままに、そう続けた。悪態をつきながらも、可愛いと認めてしまっている処が、我ながら哀れである。
「……」
一旦、落ち着こう。俺は本来、クールな人間である筈。自分にそう言い聞かせ、俺はベッドに転がった。そして、今日あったことと、その対処について思慮する。
冷静に考えれば話は簡単だった。帆月蒼空は、俺が彼女のことを好きになったと思っている。それが、誤解であるから、俺はこんなにも苛立っているのだろう。
ハッキリ言って、とんだ濡れ衣だ。しかも、好きと言った訳でもないのに、それを迷惑とされている。
仮に俺が正式な告白をした後に、迷惑だと言ったのなら、それは仕方のないこと……否、それでも、どうか?
人の示した好意に対して、それを嫌悪する女なんて、なんか嫌だ。断るにしても、それなりの礼節がある筈。まあ、仮定の話はいいか……。
とにかく、俺がすべきことは、帆月の誤解を解くこと。つまり「俺はキミのこと好きではない」と告げる。それは、通常の告白の概念の真逆の行為と言えよう。
何か角が立つ気がするな。しかし、このままでは俺の気が済まないのも事実。
「……」
黙って天井を見上げていると、最初に見た帆月の顔が浮かぶ。
本当に俺は、一目惚れを? そんな疑問を、俺は首を振り即座に打ち消した。
俺を睨んだ彼女の瞳。そして、俺に言い放った言葉。百歩譲っても、俺の興味を引いたのは、その外見だけ。この先、俺が彼女を好きになることはあり得ない。
「よし……」
明日、やってやろうじゃないか。真逆の告白――逆告白を。
何処か大袈裟な気はしている。だが、俺は強くそう決意した。