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その恋を残して
第1章 好きにならないで!
間違いないよな。俺はそれが帆月蒼空であることを確認するが、
「――!」
何故か固まったように足が動かない。昨日の彼女の瞳、そのインパクトが、俺をそうさせているのか? だが、今を逃しては……。
ギュウと拳を握り、俺は意を決して前進をした。
「あの――」
俺の第一声は実に頼りないもの。それでも、帆月は足を止め振り向いていた。
「!」
目が合う――やはり美しいその顔に、ドキリと心臓が脈打つ。
「はい――?」
帆月は微笑の中に戸惑いを滲ませていた。
あれ? 俺はその表情に違和感を覚える。上手く言えないが、何故か勢いを削がれた気がしていた。
「おはようございます」
帆月が頭を下げ、丁寧な挨拶をすると、
「お……おはよう。帆月さん……」
口ごもりながらも、辛うじて挨拶を返す俺。
すると、帆月は少しホッとしたように表情を緩めた。
「ああ、やっぱり同じクラスの人ですね。ごめんなさい、私まだ皆の名前わからないから……」
「そ、そうだよね……俺、松名宋史……」
「松名さんですね。改めて、よろしくお願いします」
「うん……よろしく」
ニッコリと微笑む帆月につられ、俺の顔もほころぶ。