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その恋を残して
第7章 眠り姫……か

『妬けちゃいますね』


 ――蒼空は確かに、そう言ったのだ。


「蒼空と怜未の間には強い絆がある。そんなこと、二人に限って……」

 呟くように、言う。

 俺と怜未と気持ちを通じさせること。それを望んだのは、蒼空であった筈だと……。

 だけど――

「あり得ないと? そう思うキミは、あまり恋をしたことがないようだね。そして、蒼空にしても、これが初恋だった。それ故、今までそんな気持ちは知らない。想像したこともなかったんだろうな」

「……」

「自分に置き換えて考えてみるといい。自分の意識のない処で、別の意識がキミの恋人と仲良くしていたら、とね」

「…………!」

 言葉を失っていた。俺は、自分の未熟さ愚かさを痛感させられた気がしている。

 尚も淡々と車を走らせる車の中で――

「キミが蒼空とだけ恋をするのなら、それは認めよう。僕はそう思っていた。しかし、今となっては、それも難しい筈。だから、場合によっては――」

 誠二さんは、そこまでで言葉を止めた。そして――

「家まで送っていこう。今日は、帰りたまえ」

「だ、だけど――」

「蒼空のことは、僕が見ている。キミに、できることはないよ」

「……」

 夕陽が山間に沈んでゆき――。車はヘッドライトを灯していた。

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