この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
その恋を残して
第7章 眠り姫……か
『妬けちゃいますね』
――蒼空は確かに、そう言ったのだ。
「蒼空と怜未の間には強い絆がある。そんなこと、二人に限って……」
呟くように、言う。
俺と怜未と気持ちを通じさせること。それを望んだのは、蒼空であった筈だと……。
だけど――
「あり得ないと? そう思うキミは、あまり恋をしたことがないようだね。そして、蒼空にしても、これが初恋だった。それ故、今までそんな気持ちは知らない。想像したこともなかったんだろうな」
「……」
「自分に置き換えて考えてみるといい。自分の意識のない処で、別の意識がキミの恋人と仲良くしていたら、とね」
「…………!」
言葉を失っていた。俺は、自分の未熟さ愚かさを痛感させられた気がしている。
尚も淡々と車を走らせる車の中で――
「キミが蒼空とだけ恋をするのなら、それは認めよう。僕はそう思っていた。しかし、今となっては、それも難しい筈。だから、場合によっては――」
誠二さんは、そこまでで言葉を止めた。そして――
「家まで送っていこう。今日は、帰りたまえ」
「だ、だけど――」
「蒼空のことは、僕が見ている。キミに、できることはないよ」
「……」
夕陽が山間に沈んでゆき――。車はヘッドライトを灯していた。