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その恋を残して
第7章 眠り姫……か

    ※    ※


「――!?」

 気がつけば、カーテンの隙間から朝日が差し込んでいることに気がついた。

 喉の渇きを感じ、俺は部屋を出る。すると――

「母さん――?」

 キッチンのテーブルに顔を伏せて、眠る母親の姿を目にした。

「ああ……オハヨ」

「なに、してるの?」

「なにって――アンタのことを、心配してたんだよ。結局、寝ちゃってたけどね」

 母親は、そう言って頭をコツンと叩いた。

「……」

 心配って――そう聞いても、何と言っていいのか……。

「ほんの親の努めよ。それで? 一晩中、考えて――なにか、わかったのかしら?」

「い、いや……」

 俺は、情けない気がして俯いた。

「そんな顔して……アンタ、母さんに言えないような悪いことでも、してるの?」

「悪いことなんて――俺は、ただ――」

 と、言いかけながら、考えを巡らせる。迂闊だったかもしれない。未熟であることは認める。それでも、それが悪かったなんて思わなかった。

 だから――


「恋をした――だけ」


 俺は不意に、そう口にしている。

 言ってしまってから、俺は焦った。どうして、そんなこと口走ってしまったのか。恐る恐る母さんを見る。

 キョトンと俺を見ていたその顔は、直後に――

「プッ! フフフ――アハハハ!」

 そんな風に吹き出し、笑い始めた。

 俺は顔を真っ赤に紅潮させる。

「わ……笑うなって!」

「ウフフ……ゴメンゴメン。なんだ、そうかそうか」

「は……?」

 妙に納得した母さんの態度を、俺は不思議に眺める。

 そしたら――

「悩んでるくらいなら逢いに行って来なさいよ。彼女に」

「なにも知らないくせに、勝手なこと言うなよ」

「知ってるよ」

 母さんは、あっけらかんとして言うのだった。

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