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その恋を残して
第7章 眠り姫……か
「知ってるって……なにを?」
そう訊くと、母さんは答える。
「アンタが優しい子だってこと。母さんはそれを、誰よりもよく知っているの」
「ば――」
馬鹿なこと言うな――そう言おうとして言葉が詰まる。何故だか胸が熱くなり、涙がこぼれそうになった。
「臆病で慎重――でも、その内に秘めているものは、純粋な優しさ。その点では、自慢の息子だわ。そんな、アンタが恋した相手なら、間違いないって思うの。その娘がいい娘だってことも、母さん、わかってるから」
「…………」
「そりゃ、さ。何があったのかなんて、知らないわ。でも、アンタが本気なのは伝わる。だったら、たぶん――足りないのは勇気なんじゃない?」
勇気――その言葉は、どこかで散々聞いて聞き飽きているような言葉。綺麗事の象徴のように感じていたそれは――でも、この瞬間、俺の心に響こうとしていた。
「ホント、勝手な言い草だ――」
「なによ」
「母さん――出かけてくるね」
俺がそう告げると、母さんはニッコリと笑う。
「ご飯作るから、シャワーでも浴びて来たら。出かけるのは、それからにしなさい」
「うん――」
と、頷く。