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その恋を残して
第7章 眠り姫……か
この時のことを、俺は後に思い返すことができない。
只、俺自身も蒼空と同様に、眠りの中にいるような不思議な感覚だけが残っている。
どれくらい、そうして語りかけていただろう。
「ま、松名……くん?」
「――!」
その声が、俺を現実に引き戻したような錯覚を受ける。
恐る恐る目を開くと、潤んだ瞳で俺を見つめる蒼空がいた。
「松名、くん……わ……私……私、は……」
そう言った蒼空の瞳から、次々に溢れだす涙。
俺はそれをそっと拭うと――
「おはよう……蒼空」
そのまま、蒼空の細い身体を抱き寄せていた。