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その恋を残して
第7章 眠り姫……か
部屋の中には、俺と眠っている蒼空だけ。
「蒼空――」
俺は顔を近づけて、名を呼ぶ。しかし、蒼空はまるで反応を見せることなく、尚も眠る続けていた。
「眠り姫……か」
誠二さんが、そう表現した通り。刻が止まったように眠り続ける蒼空の顔は、とても美しく思えていた。だけどそれを、このまま眺めている訳にはいかない。
そう言えば『眠り姫』を目覚めさせたのは――『王子さまのキス』――――!
「バ……バカ!」
俺は自分の中に生じた良からぬ考えを、打ち消すように首を振った。
大体、この俺が王子さまって柄ではなく。だからそんなの、自分の願望を正当化しようとしているに過ぎないのだ。
こんなことでは、せっかく時間をくれた誠二さんと沢渡さんに申し訳が立たないじゃないか……。
「でも、どうしたら……」
俺は頭を冷やすように呟く。すると――
「――!」
俺の脳裏に、ある一場面がイメージされていた。
俺はベッドの傍らに膝をつき、蒼空の右手を両手で包んだ。そして、その手を額に当てるようにすると、両目を閉じる――。
そう――これは沢渡さんから聞いていた場面。事故で生死をさまよっていた怜未に、蒼空がしたのと同じ行為であった。
そして――俺は心の中で、祈るように蒼空に語りかける。
(蒼空――蒼空――)
と、とにかく――一心に、それを。