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その恋を残して
第8章 ……終わっちゃった、ね

 目覚めた蒼空を誠二さんが診察した。熱も下がり特に異常は認められなかったが、大事をとって更に半日ほど静養する。と言っても流石に、ベッドで休むことはしなかったけども。

 その後、夕方になり、俺と蒼空は屋敷の庭に出る。ようやく蒼空とゆっくり話せたのは、その時であった。

「もう、平気?」

「はい。大丈夫ですよ」

 蒼空が控えめに笑うのを見て、俺は次の言葉を迷う。

 話したいことはある。訊きたいこともある。謝りたいこともある。でも、その全ては同時に怜未を印象づけるものだ。

 今は、まだ怜未のことを語れない気がする。目の前の蒼空が、とても脆いガラス細工のように映っていた。

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