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その恋を残して
第8章 ……終わっちゃった、ね

 目を覚ました後、蒼空はこんな風に言っている。

「私……怜未に、心を閉ざしてしまいました」

 それは、俺にとっても、とても重い言葉だった。もしかしたら、怜未はこのまま――そんな不安が募る。

 だが、そのことで、誰よりも苦しんでいるのも蒼空なのだろう……。今は蒼空の精神を安定させることこそ肝要。たぶん、俺にできることはそれくらいで精一杯だと思う。

 今更ながら、蒼空と怜未――二人と良好な関係が築けるような気がしていた脳天気な自分に対して、腹が立つ想いがしていた。

「あ――!」

 一滴の雨露が、ポツリと俺の鼻先に落ちる。

「振りそうだよ。蒼空、家に入ろう」

 そう言った俺の手を、蒼空がそっと握り、庭の大きな欅の木の下へと俺を誘った。

「雨宿りです」

 蒼空が、俺を見上げると。

 何故だろう。その蒼空は今までにない、艶やかな顔をしていた。

 そして――

「私のこと――好き?」

 少し顔を斜めに、蒼空は訊ねる。

「うん。好きだ」

 突然のその問いに、俺は即座に答えていた。

 だけど、次の問いには、そうはできない。

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