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その恋を残して
第2章 好きでは、ないから……
「さっき……?」
「俺が寝てた時」
「別に何も……」
「なら、いいんだけど……」
さっき訊いたのは俺の脳内で再生された声だったらしい。それを確認して、少しホッとした俺は何気に時計を見た。
「あれ、もう昼休みか」
「そうだけど、保健の先生が戻って来ないから」
「それは悪かった。ありがとう。もう、平気だから」
「……」
しかし、帆月はこの場を動こうとしない。
「どうかした?」
下を向いていた帆月は、膝に置いていた両手をキュッと握ってから、今度は真っ直ぐに俺の方を見た。
「この前、言ったこと怒っていますか?」
俺は彼女の瞳をジッと見た。何処か気丈でもあり、何処か脆そうでもあり。昨日の帰りに話した時とは、何処か違って映っている。
「この前……帆月さんが編入してきた日のこと?」
「そうです」
「怒ってないけど……少し驚いた」
昨日は全くスルーされていた話を、今日は帆月の方から言いだされ、俺は不思議に感じていた。
「ごめんなさい」
帆月は沈痛な面持ちで、俺に頭を下げる。