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その恋を残して
第2章 好きでは、ないから……

    ※    ※


『私を好きにならないで!』


 その声を聴いた気がして、俺はビクリと上体を揺らす。

 あれ、俺は寝てたのか? そこはベッドの上。そして保健室であることを認識すると、俺は理由を思い出す。

「イタタ……」

 俺がボールの当たった、額を押さた時――

「大丈夫?」

 と、傍らから声をかけられて、思わずビクリとする。

「あ!」

 ベッドの傍らに座っていたのは、帆月蒼空だった。

「なんで?」

「ボールが顔に当たって気絶したんです」

「いや、そのことじゃなくて……」

 俺が訊いたのは何故、帆月が付き添っているのかということ。彼女もその意図を理解したらしい。

「今、保健の先生が居なくて。私、今日の体育見学だったから、様子を見ていてくれって頼まれたんです」

 そんな訳か。俺は、その理由に納得しつつ、別の疑問が浮かぶ。

「あのさ……さっき、何か言わなかった?」

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