この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
その恋を残して
第2章 好きでは、ないから……

俺は、いつものように学校を帰って行く。校門の所で、少し振り向いてみるが、今日は誰も俺を呼び止めはしない。別にそれを寂しいと思う訳ではない。別にいつものこと。この二日間がちょっとだけ特別だっただけなのだろう。
善くも悪くも、その特別を味あわせてくれたのは帆月蒼空だ。しかし、保健室の一件の後は、特に話す機会はなかった。何やら複雑な想いにかられつつ、俺は学校を後にして歩き始める。今日はバイトがあるからグズグズしている訳にもいかなかった。
歩きながら、俺はやはり帆月のことを考える。相変わらず捉え処はないのだが、それでも彼女と接し話したことから、見えてきそうなこともあるように思えていた。
今日、話して改めて実感したことがある。それは、帆月が持ち合わせている二面性についてだ。俺の前では、昨日の帆月と今日の帆月の態度は明らかに違っている。
だが二面性など、広い意味で考えれば人間誰しも持っているだろう。例えば、表の顔と裏の顔。そんな言い方は割と良く耳にする。あと、本音と建て前とか、それに類似したものならば、別に特別なことでもないであろう。
そう考えれば帆月は、まだこの学校に来て日が浅い。素の自分と余所行きの自分が混同してしまうことだってあるだろう。
だから、彼女が極端な二面性を有していると決めつけるのは乱暴に思える。しかし、そんな部分を差し引いても、彼女の俺に対する言動は不可解ではあった。
帆月は何らかの問題を抱えている。そのことは、彼女の言動から察するに、もう間違いはないと思われる。彼女が俺に、それを話してくれるのなら力になれるかもしれないのに――そう考えると少し歯がゆい思いだった。

