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その恋を残して
第2章 好きでは、ないから……

「ん――?」

 もしかして――俺は帆月の為に、何かしたと思っているのだろうか?

 だとするのなら、それは少し意外な感情である。しかし、自分の気持ちの一端を垣間見た気がして、僅かにすっきりした気分でもあった。その気持ちを恋愛感情とは呼べないし呼びたくもない。

 でも、帆月がもし、何らかの事情で苦しんでいるのならば、それを俺は助けたいと感じているのは事実のようだった。

 俺は家と程近い小さな工場で、週三日のペースでバイトしていた。家は母親と二人暮らしであるので、僅かでも家計の助けになればといった感じである。

 仕事内容は、工場で生産した製品の洗浄と梱包――。はっきり言って高校生のバイトとしては地味なものだ。しかし、社交的とは言い難い俺にしてみれば、接客業などよりもずっと向いているとは思われるのだ。

 工場と言っても、至って小規模であり、社長夫妻と従業人五名程度で細々とやっている。だが、今世紀に幾度も訪れた不況の波に屈することなく、今日まで生き延びてきていることは称賛に値するのだ。(何様かと言われそうだが……)

 と、言った訳で、今日も学校帰りに数時間、作業に没頭しているのであるが――

「松名くん! コレ、箱が違ってるよ!」

 社長夫人(と言っても五十過ぎのオバちゃんだが)から、そんな声が飛んだ。

 確認すると、確かに別の製品の箱に入れてしまっている。

「あ、ホントだ。すいません――」

「もう、気をつけてよ。ボーっとして、彼女のことでも考えてたのかい?」

「イヤ――そんなのいませんし。と、とにかくやり直します」

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