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その恋を残して
第2章 好きでは、ないから……
※ ※
「…………」
夕飯の時、俺は箸を止めて、この日のメインのおかずである、から揚げを見つめる。
「プッ――!」
その顔を眺めた俺の母親が、突如として吹き出していた。
「な……なに?」
そんな母親の顔を、俺は睨みつけるが、
「ゴメン……マジな顔をしちゃってるの見たから、つい――」
悪びれた様子もなく、母さんは言う。
酷い話だ。息子の真剣な表情がツボに入るって、一体どういう仕組み? まあ、そんな処も、俺の母親らしい部分ではあるが……。
俺は、そんな母親との二人暮らし。母さんは仕事で遅くなることが多いので、こうして揃って夕食をするのは久しぶりであった。
「そういう場合、『何かあったの?』と、心配して訊くんじゃないの? 普通は」
「何かあったの?」
「そのまんま言うなって。少し工夫しろよ」
「だって、アンタ――どうせ言わないでしょ?」