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その恋を残して
第2章 好きでは、ないから……
「……」
「大体ね。日々、必ず『何かはある』の。毎日、同じつもりでいたら面白くないわよ」
それはそうかもしれないと思う。今、俺は帆月蒼空のことで悩んでいる。ここ数日、頭の中はモヤモヤしっぱなしだ。だが、だからといって、彼女が俺の前に現れなかったら良かったのに、とは思わない。
暫く食事を続けてから、俺は不意にこう訊いた。
「自分の言葉で人が傷ついたとしたら……その言葉は訂正した方がいいかな?」
「なにそれ? 具体性の無い質問ね」
「だって、具体的には言いたくないし……」
その質問に母さんはやや不思議そうな顔をしていた。それでも、顎に手を置き、ウーンと難しい顔をして考え始める。
「その言葉って、アンタが正しいと思って言ったこと?」
「――それが、自分でもわからない。思わず口走っていたから……」
「だったら、自分が軽率だったことを、まず詫びなさい。自分の中で答えが出てないなら訂正しようもないでしょ?」
「……そうか」
「あと、焦って答えを出そうとしない。特に、理屈で考えたってわからないことはね」
「考えてもわからないことに、答えは出るのかな?」
「うん。出るよ。いつか必ずね」
母さんは、そう言って笑った。