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その恋を残して
第3章 私と、蒼空の秘密
 帆月蒼空と出逢ってから五日目――金曜日。

 もう昼休みになっているが、今日は帆月と一言も話をしていない。早く昨日のことを謝りたいと機会を窺っていたのだが、どうも意図的に避けられているようだった。視線すら合わせようとしてくれない。

 それは、俺が嫌われてしまったからなのか? そうだとすれば、やはり一刻も早く謝りたいのだが。その前に、俺は別の可能性を考慮していた。

 それとも、昨日の帆月ではない――から?

 俺は、昼食を食べている帆月の方に目をやった。帆月と一緒に食べているのは木田と佐藤。彼女たちは帆月の態度に、俺と同様の違和感を覚えていないのだろうか……。

「どうした? ジッと帆月を見つめちゃって」

 田口が俺を茶化す。普段なら、速攻で否定する場面なのだが。

「お前って結構、女子と話すよな?」

「何だよ急に。別に普通だよ。自分が話せないからって人を女好きみたいに言うな」

「俺のことはいい。お前、何か帆月のこと聞いてないか?」

「おお! ついにお前も目覚めたのか」

「は?」

「目くるめく男女交際に!」

 色めきだつ田口を見て俺はイラッとする。コイツに訊いたのは間違いだったらしい。

「ああ……もう、いいや」

 俺は顔を伏せて話すのをやめる。すると、田口は――

「昨日、木田から聞いたんだけど――」

 と、話を始める。最初から言えよ、と、思いつつも俺は耳を傾けた。

「いいとこのお嬢様らしいぜ。毎日、高級車で送り迎えされてるってさ」

「――他には?」

「木田から聞いたのは、そのくらい。後は見ての通りじゃね? 口調が丁寧で大人しくて、最初の印象とあまり変わらないけどな」

「でも、何か違って見える時ないか?」

「違って見えるって、どんな風に?」

「いや……」

 俺は言葉に詰まった。

 田口と木田の印象は、概ね昨日の帆月のものに近いと思われる。そして、その印象を覆すような帆月を知らない? だとすれば、帆月は俺にだけ、その二面性を見せていることになるが……。

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