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その恋を残して
第1章 好きにならないで!
「どうかしたのか?」
木崎先生の少女の方を向くと、
「いいえ……」
彼女は素知らぬ顔で、そう答える。
「新しいクラスメイトを紹介する。彼女は――」
木崎先生が話し始めていたが、まだ俺の耳はそれを聴いてくれない。
あの一瞬、彼女が俺に向けた視線は、それ程に強烈だった。不覚にも彼女の美しさに目を奪われた俺に対する、嫌悪であり拒絶であるかのようにさえ思える。
「帆月……蒼空(ほつきそら)です。よろしく、お願いします」
ようやく俺の耳に届いた声は、か細く儚い響きだった。
パチパチと拍手が鳴ると、はにかんで笑った帆月が丁寧にお辞儀している。その姿は先程、俺を睨みつけたイメージとあまり違っていた。
その時抱いた違和感こそが、俺たちの始まりだったのかもしれない。