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その恋を残して
第1章 好きにならないで!
「何で立ってたの?」
休み時間のこと。田口の問いに、俺はギクリとする。
「え……な、何が?」
惚ける俺を見て、田口はニヤリと笑う。
「帆月蒼空が、教室に入った時のこと。お前――席を立っていただろ?」
くそ……一瞬だから、誰も気づいてないと思ったのに……。大体、コイツは前の席じゃん。後ろに目でもついているのか?
「別に……理由なんてないんだけど」
「うん。理由なんてないよな。つまりそれが、一目惚れっていうものだし」
「バ……バカ。そんなんじゃねーよ!」
「まあまあ……あれだけの美少女だし、無理もないって」
「勝手に決めるな!」
「お前も普通の男だったとわかって、安心したぜ」
「違う」
「えっ? 違う? じゃあやっぱ、お前って男の方が――好きなの?」
「ちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうち――ガウチ!」
あらぬ疑惑を晴らさんと必死だった。俺は念仏の如く否定を繰り返していた結果、イタリア的な名前を絶叫する。