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その恋を残して
第4章 二人で一人、なのです

 今日は休みの土曜日――俺は一人、市民公園にいる。

 広い敷地を有するこの公園は、図書館や美術館、またプールやテニスコート等のスポーツ施設も併設され、地元においては憩いの場として親しまれていた。この日も家族づれやスポーツを楽しむ若者たちの姿が見られる。天気は晴天だ。

 今日、俺がここに来たのは、帆月蒼空と会う為。駐車場から公園内に続く入り口付近のベンチに座り彼女の到着を待っているのである。暫く待ち続けてから、俺は携帯を取り出し時間を確認した。

「……」

 約束の十時を十分程、過ぎている。本当に来るのか? そんな不安が込み上げた。

 確かに約束はしていた。しかし、それは俺が怜未とした約束である。今、俺が待っているのは蒼空。そんな風に考えると、やはり、不思議な気分になってしまう。

 昨日、沢渡さんから聞いた話の衝撃は今も俺の心に残されていた。正直、まだ百パーセント信じていると言い切れはしない。だが、俺はそれを受け入れることを決めている。

 きっと、蒼空は来る。そしたら――そう思い直した時、駐車場に見覚えのある黒い高級車が入ってくるのが見えた。
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